版画はいったん版を彫ると、インクをつけて何枚でも紙に刷ることができます。部分ごとに絵の具の色を変えたり、乾かしながら重ねて刷ることもできます。
版画には木を彫る木版画、塩化ビニル板をニードルで引っかいて描くドライポイント、銅の板にグランドをかけてニードルなどでかき取り、現われた銅を腐食させるエッチングの手法を用いた銅版画、水と油の反発を利用した平版のリトグラフ、孔版のシルクスクリーンなど様々な技法があります。それぞれ特徴があり表現の幅も広いです。
今日は木版画について紹介します。木版画は木の平たい板に彫刻刀で彫って作ります。ふつうは凸版として、凸の部分にインクや絵の具をつけて、紙を置きばれんでこすってインクや絵の具を移しとります。
絵を描くのとは味わいが異なり、独特の雰囲気を出すことができます。日本では江戸時代に浮世絵が版画で多色刷りの手法で刷られるようになりました。それ以来、庶民も含めて版画に親しめるようになりました。錦絵といわれたのは鮮やかな多色刷りの浮世絵をそう呼んだからでした。
版木にする木の種類にはそれぞれ特徴があります。
①シナ…とても柔らかく、版木によく用いられます。この木をベニアの合板にしたものがよく用いられます。
②ホオ…この木も柔らかく、木目が目立たず、微細な表現にも向いています。
③カツラ…この木も柔らかで版画に向いています。
④サクラ…他よりも堅いですが、版木としては優れていて細かな表現ができます。版木としても長持ちします。
版木に刷る板材は最近は合板(ベニヤ)が多いですが、天然の木を使う場合には、板目板を使います。
輪郭線を残して彫る彫り方を陽刻といいます。白っぽく仕上がります。それに対して輪郭線を彫って周囲を残す手法を陰刻といいます。黒っぽく仕上がります。それぞれのねらいに合わせて手法を選ぶといいです。
彫刻刀は主に4種類を使い分けします。
①切り出しは、輪郭線を彫ったり、鋭い線を表現したい場合に使います。
②平刀は、一度に広い面をほることができます。かすれたような表現、ぼかしなどもあら
わすことができます。
③丸刀は、輪郭が曲線となりやすく軟らかな表現をすることができます。太い丸刀は広い面を彫ることができます。
④三角刀は、鋭い線をほることができます。長い直線を彫ることもできます。
単色の木版画の方法を説明します。テーマを決めたら下絵を柔らかい鉛筆(4B程度)で描きます。裏返して版木にこすりつけます。すると鉛筆で描いた下絵を版木に移し取ることができます。その絵に対して、墨入れをします。このとき黒、白のバランスや、つながりを考えて墨入れをします。
そして彫ったあとがわかりやすいように、全体に薄い墨を塗ります。その薄い墨の部分を彫っていきます。彫りがうまくいっているかどうかは、紙を重ねて、柔らかい鉛筆で紙の上からこすってみることで、ある程度判別できます。彫り終わったら、彫った木のかすをよくかたづけてから、刷りの工程に入ります。
インクをローラにまんべんなくつけたら版木にローラーを軽く転がし、凸部にまんべんなくインクをつけます。湿らせておいた紙の角を正確に見当に合わせて重ねます。上からばれんで刷り、中心から外側に向かってまんべんなく刷ります。刷りが薄い場合には一部を重ねたまま、紙を引き上げ、版木にローラーのインクをのせて2度刷りしてもよいです。
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